著作権のはなし ~著作権者の許可なく利用できる場合~

著作権のはなし ~著作権者の許可なく利用できる場合~

著作権法は、特別の場合には、一定の条件のもとで、著作権者の許可をとらずに著作物を自由に利用できる場合について定めています。このように自由に利用できることを「権利の制限」といいます。権利の制限というのは、著作権者の権利を特別の場合に限って制限し、例外的に無断で利用してもよいことにするというものです。

たとえば次のような場合には、著作物を自由に利用することができます。

(1)私的使用のために複製(コピー)すること

個人的に、または家庭内などの限られた範囲内で利用する場合は、利用する本人が著作物をコピーできます。(著作権法第30条)

たとえば、自分の好きなテレビ番組をもう一度自分や家族と一緒に見るために録画することはこの規定にあてはまります。しかし、友だちに録画したビデオを貸すようなことは、個人的、家庭内の利用という範囲に入らないのでダメですね。

(2)図書館などで複製(コピー)すること

公共図書館のように政令で定められた図書館その他の施設は、図書館等の利用者から調査研究などの目的でコピーの希望があった場合は、図書館にある本や資料をコピーしてあげてもよいのです。(著作権法第31条)

図書館にあるコピー機のまわりに、こんな掲示を見たことが無いでしょうか

  • コピーできるものは図書館内の資料に限ります
  • 利用者の調査研究の目的にのみコピーできます
  • 調査研究の目的であっても、法人等の方はコピーはできません
  • 調査研究の目的であっても、法人等の方はコピーはできません
  • 資料をコピーできる範囲は全体の半分以下です
  • コピーは1人1部に限ります
  • コピー申込書に記入して。受付にお申出ください

こうしたルールを守る場合だけ、コピーが許されるのです。

(3)自分の著作物に他人の著作物を引用すること

たとえば、自分の論文の中にほかの人の論文の一部を引用(自分の文章の中に、他人の文章など持ってきて説明に用いること)することができるという規定です。(著作権法第32条)

引用する場合は、以下のような条件があり、このような場合には、著作物を自由に利用することができます。

  • 公正な慣行に合致するものであること
  • 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であること
  • 自分の論文が中心で、引用する論文はその一部であるということが明確であること
  • 引用した部分を「」でくくるなど、自分の文と、引用文とを区別すること
  • 引用してきた論文の題名・著作者名・出版社名・引用した部分が掲載されているページ数などを明示すること

(4)学校などの教育機関で複製(コピー)すること

学校などの教育機関の先生や生徒が教材を作成したり、生徒が授業で発表するために著作物をコピーすることができます。(著作権法第35条)

ただし学習ドリルやワークブックのように生徒一人ひとりが購買することを前提として販売されているものについてはこの規定は適用されませんので、コピーできません。

(5)「非営利・無料」で、著作物を上演、演奏などすること

以下の3つの条件をすべてみたすと、著作物を「演奏」「上演」「上映」「口述(口で話すこと)」などを行うことができます。(著作権法第38条)

  • 営利を目的としないこと
  • 入場料が無料であること
  • 出演者に金銭など報酬が支払われないこと

その他、面白いものとして、最近話題の人工知能に「学習」させるために複製すること等にも著作権の制限があります。

著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

つまり、ChatGPTなどの人工知能に「学習」させるためという「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」についても、著作権の制限があるわけです。

もっとも、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、著作権侵害になります。

ここらへんは、2023年12月末にNew York TimesがChatGPTを提供するOpenAIとマイクロソフトを著作権侵害で訴える訴訟を起こしたことからも興味深いですね。

この訴訟では、著作権で保護されているNew York Timesの記事がAIのトレーニングに無許可で利用されただけでなく、オリジナル記事の「丸写し」が生成されたと主張し、同社のコンテンツを含むAIモデルとデータセットの破棄を要求しています。

OpenAI側は、Fair Useであると反論しています。

日本法であれば、上記のとおり、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」となりそうですが…

如何でしたでしょうか。

以外に身近なところにも著作権の制限がありますね。