相続財産清算人のこと

相続財産清算人のこと

相続財産清算人を

ご存じでしょうか? あまり聞かれたことのない方もいらっしゃるかも知れませんが、今回は、相続財産管理人について、見ていきましょう。

1.相続財産管理人の概要

(1)相続財産管理人とは

相続財産清算人とは、相続人に代わり被相続人の財産を管理する人のことです。従前は、「相続財産管理人」と言われていましたが、令和5年4月1日の改正民法の施行により、相続財産管理人は「相続財産清算人」に名称変更されました。

従前の「相続財産管理人」の職務は相続財産の保存行為・管理行為(のちに説明します。)に限られ、債権者への支払いなどの処分行為を行うことはできませんでした。しかし、「相続財産清算人」は、相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告を出す義務があるほか、一定の条件のもと、処分行為を行うことができます。

「相続財産清算人」と「相続財産管理人」は似ている名称ですが、その職務は全く異なります。

なお、遺産分割協議がまとまらないなど一定の場合には、「相続財産管理人」の職務である保存行為のみが必要な場合がありますが、その場合は家庭裁判所が、申立により「不在者財産管理人」を選任します。

(2)相続財産管理人が必要とされる場面

ご存じの方も多いと思いますが、被相続人の財産は、相続人全員が財産管理を行うことが基本です。しかし、状況によっては相続人が誰もいないこともあります。

財産管理を行う人がいなければ、被相続人に債権があった場合は返済が滞ってしまったり、不動産を所有している場合は管理が行き届かずクレームが発生したりする可能性があります。

そういった事が起こらないために、被相続人の相続財産を適切に管理し、清算するために必要となるのが「相続財産清算人」です。

相続人の存在、不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれます。)には、申立てにより、家庭裁判所が、相続財産清算人を選任します。

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

申立てを受けた家庭裁判所は、内容を審査し、適切な相続財産清算人を選任します。

相続財産清算人に選任される人は、弁護士や司法書士などの専門家が多く選ばれる傾向にあります。しかし、申立てを行った利害関係者が候補者を推薦することもあります。

ただし、家庭裁判所の審査によっては、必ずしもその候補者が選任されるわけではありません。

(3)相続財産清算人の業務範囲

相続財産清算人の役割は、相続財産や相続人を調査し、被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。なお、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。

相続財産清算人は、他人の財産を管理する重要な役割であり、勝手に財産を処分することはできません。

財産管理人に与えられている権限は、つぎの2つです。

  • 管理行為・保存行為
  • 処分行為

一つずつ見ていきましょう。

①管理行為・保存行為

「保存行為・管理行為」とは、相続財産の状態を変えない範囲で財産を維持・利用することです。

相続財産清算人は、相続財産の「保存行為・管理行為」については、家庭裁判所の許可を受けることなく、自らの判断で行うことができます。

具体的には、下記のような行為を行うことが可能です。

  • 不動産の相続登記
  • 建物の修繕工事
  • 預金の払い戻し・預金口座の解約
  • 既存の債務の履行・賃貸契約の解約

なお、不動産の売却や家具家電の処分といった行為は、次でお話しする処分行為に該当し、家庭裁判所の許可がないと行えません。(民法第953条、同第28条)

②処分行為

「処分行為」とは、権利の移転・変更・消滅を行なったり、その目的物を破壊・消滅したりする行為のことです。なお、「処分行為」には、家屋の売却や有価証券(株式等)の質入れなどの「法律的処分行為」と家屋の取りこわしなどの「事実的処分行為」とがあります。

相続財産清算人の権限は、原則的には「保存行為・管理行為」のみですが、家庭裁判所の許可を受けることで、「処分行為」が可能となります。

具体的には、下記のような行為を行う場合には、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てを行い、許可を受ける必要があります。

  • 不動産の売却
  • 有価証券(株式等)の売却
  • 家電・家具の処分
  • 墓地の購入や永代供養費の支払い
  • 定期預金の満期前の解約
  • 訴訟の提起

もし、家庭裁判所の許可を得ないまま処分行為を行った場合は、法的権限がない行為なので、相続財産清算人が法的責任を問われるだけではなく、取引の相手に損害が被る可能性もあります。

2.相続財産管理人のの選任の条件

相続財産清算人はどのような場合に選任されるのでしょうか。

相続財産清算人が選任される場合は、次の3つです。

  • 法定相続人がいない場合
  • 相続人全員が相続放棄をした場合
  • 欠格・廃除で相続人がいない場合

相続財産清算人を選任できるのかどうか、判断するためにひとつずつ確認していきましょう。

(1)法定相続人がいない場合

まず、法定相続人が誰もいない場合は、不在者財産管理人の選任が可能です。

法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のことです。法定相続人が誰もいなければ、被相続人の財産を管理する人が誰もいません。

そのため、不在者財産管理人の選任が必要となります。

法定相続人がいない場合とは、被相続人(亡くなった方)に血縁関係者が誰もいないことです。

【法定相続人の例】

  • 配偶者
  • 子(亡くなっている場合は孫)
  • 親(亡くなっている場合は祖父母)
  • 兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)

法定相続人は、配偶者は常に相続人であり、それ以外には次のとおり優先順位があります。

【相続順位】

相続順位              続柄

第1順位              子(亡くなっている場合は孫)

第2順位              親(亡くなっている場合は祖父母)

第3順位              兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥姪)

第1順位である子がいなければ、第2順位である親が、親がいなければ第3順位である兄弟姉妹が法定相続人となります。

第1順位と第3順位の人が亡くなっていれば、代襲相続としてそれぞれの子どもが法定相続人です。

ここまでの人たちが誰もいない場合には、法定相続人が誰もいない状態となり、相続財産清算人が必要となります。

(2)相続人全員が相続放棄をした場合

法定相続人がいる場合でも、相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産清算人の選任が可能です。

相続放棄とは、被相続人の相続財産を一切相続しないということです。

相続人全員が相続放棄をしている場合は、全員が相続人ではなくなるため、相続財産の管理をする人がいなくなります。 そのため、債権者が相続財産から弁済を受けるなどを行うには、相続財産清算人の選任が必要です。

(3)欠格・廃除で相続人がいない場合

法定相続人がいる場合でも、その相続人が欠格・廃除に該当する場合には、相続人不存在となるため相続財産清算人の選任ができます。

欠格・廃除とは、被相続人(亡くなった方)に対して悪いことをした人に相続する権利を与えないようにするという民法上の制度です。

欠格事由としては、被相続人や相続人の殺害、それを手助けした場合、被相続人を脅して自分に有利な遺言を書かせた場合などです。

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

廃除は、被相続人の生前の意思により行われます。

相続人による虐待や侮辱行為があり、被相続人(亡くなった方)が申立てし、その事実が家庭裁判所に認められれば、その相続人は相続権を失います。

(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

法定相続人がいたとしても、その人が欠格・廃除に該当し、裁判所により相続人から除外されて、他に相続人がいない場合は、相続人不存在となります。

この場合も、債権者が相続財産から弁済を受けるなどを行うには、相続財産清算人の選任が必要となります。

★例外【相続人がいなくても相続財産清算人の選定が不要な場合】
なお、被相続人に相続人がいなくても、遺言があり遺言執行者が選任されている場合は、相続財産清算人の選定は不要です。この場合、遺言執行者によって遺言が執行されるため、受遺者は遺贈を受けることができます。
また、遺言があり遺言執行者が選任されていない場合でも、相続財産清算人の選任は不要です。この場合、受遺者は家庭裁判所へ遺言執行者の選任申立てを行うことで、遺贈を受けることができます。
 
ただし、遺言に相続債務の支払いについて記載がなく、相続債権者が相続債権の支払いを求める場合には、相続財産清算人の選任が必要です。この場合、相続財産清算人の選任申立てを行わなければ、相続債権の支払いをしてもらうことができません。

3.相続財産管理人の選任申立がなされる具体例

実際にどのようなときに相続財産清算人の選任の申し立てがなされるのでしょうか。

選任申立てがなされる代表的な3つの具体例を紹介します。

  • 債権者として債権の回収をしたいとき
  • 相続放棄をしたけれど財産管理をしているとき
  • 特別縁故者として財産分与を受けたいとき

一つずつ見ていきましょう。

(1)債権者として債権の回収をしたいとき

相続財産清算人の選任をするパターンとして最も多い例が、債権者により申立てを行うときです。

被相続人(亡くなった方)に対して債権を持っていた債権者が債権の回収をしたい場合、相続人がいれば相続人が遺産の中から支払いをしてもらうことができます。

しかし、相続人がいない場合は、誰も支払いをしてくれません。勿論、勝手に遺産の中から回収することもできませんし、裁判を起こすにも相手もいません。

そこで、債権者が相続財産清算人の選任申立てを行う必要が生じるわけです。

相続財産清算人が選任されれば、債権の請求を行うことができ、必要な支払いをしてもらうことができます。

(2)相続放棄をしたけど財産管理しているとき

相続放棄をしたからといって、すぐに財産管理をする必要がなくなるわけではありません。

最後に相続放棄をした相続人は、相続財産清算人が選任され管理が始まるまでは、自分の財産と同等に財産の管理をする必要があります。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

もし、相続財産清算人が選任される前に、建物の崩壊などで他人に損害を負わせた場合には、損害賠償請求される場合があります。また、管理対象の財産を壊したとして、債権者からも損害賠償請求されることもありえます。

相続財産清算人が選任され、管理対象の財産を引き渡すことができれば、相続放棄をした人の管理義務はなくなります。

相続放棄をしたとしても、相続財産清算人が選任されないと管理義務を免れることができないわけです。

相続人全員が相続放棄をした場合は、速やかに相続財産清算人の選任申立てを行う方が良い場合も多いでしょう。

(3)特別縁故者として財産分与を受けたいとき

相続財産清算人の選任をするパターンの3つ目は、特別縁故者として財産分与を受けたいときです。

特別縁故者とは、法定相続人ではないけれど、被相続人(亡くなった方)と特別な関係にあった人のことで、具体的には、被相続人と生計を同じくしていた内縁の妻や事実上の養子、被相続人の療養介護をしていた人がこれに該当します。

被相続人に相続人がいない場合、特別縁故者は家庭裁判所に対して、「特別縁故者に対する財産分与」の申立てを行うことができます。

特別縁故者として、家庭裁判所より財産分与を認められる審判が得られれば、相続人でなくても被相続人の財産をもらい受けることができます。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

財産分与の申立てを行うためには、被相続人の財産管理をして財産分与の手続きをしてくれる人が必要です。

相続財産清算人が選任され、財産管理が始まれば、財産分与の申立てを行うことができます。

特別縁故者として財産分与を受けたい場合には、相続財産清算人の選任申立てを行った方が良いしょう。

なお、目論見通り、特別縁故者として財産分与を受けた場合には、どれくらいの課税額になるかは想定したほうが良いかもしれません。特別縁故者の相続税は通常の2割増しになりますので、そのときになり「こんなはずではなかった…」となったら大変です。

4. 相続財産清算人の申立てが却下される場合

相続財産清算人の申立てを行っても、要件を満たしていなければ選任されずに申立てが却下されます。

家庭裁判所が相続財産清算人の申立てを却下するのは、次の4つの場合です。

  • 相続人が存在した場合
  • 相続財産が存在しない場合
  • 申立て権限が無い場合
  • 予納金を支払わない場合

相続財産清算人の選任を考えている場合、どのような場合に申立てが却下されるのか確認しておきましょう。

一つずつ見ていきます。

(1) 相続人が存在した場合

被相続人に相続人がいる場合は、相続財産清算人の選任申立てができません。

申立ての際の必要書類である戸籍謄本等を確認することで、相続人の存在が明らかになれば、申立ては却下されます。

相続財産清算人の選任申立てを行う際は、戸籍謄本等で相続人がいないことを確認しているはずです。

しかし、家庭裁判所が戸籍謄本等を確認すると、相続人が存在していることが分かることがたまにあります。

それは、次の理由によります。

  • 戸籍謄本等を見間違えている
  • 相続人の範囲を間違えている

昔の戸籍謄本等は手書きになっていて、非常に読みにくいため、見間違えやすいのです。

また、そもそも相続人の範囲を間違えて申立てを行う人もいます。亡くなっている兄弟姉妹の子ども(甥姪)や非嫡出子が相続人であることを忘れてしまうのです。

間違えて選任申立てを行えば、申立ては却下され、相続財産清算人が選任されることはありません。

(2) 相続財産が存在しない場合

相続財産清算人は、その名のとおり「相続財産」を管理する人ですので、管理する相続財産がなければ、相続財産清算人の申立ては却下されます。

また、相続財産が少額の場合も同様で、家庭裁判所が選任する意味がないと判断すれば選任されない場合があります。

もっとも、相続財産が少額であれば、手続き費用の方が高額となることもありうるため、そもそも申立てを行う必要もありません。

(3) 申立ての権限が無い場合

相続財産清算人の選任申立てがあっても、申立人に権限がなければ却下されます。

相続財産清算人の申立ができる人は、利害関係人又は検察官のみです。

利害関係人とは、相続財産清算人が選任されなければ、法律上の目的が達成できない人のことをいいます。

具体例としては、以下の人がそれになります。

  • 特定遺贈を受けた人
  • 特別縁故者
  • 債権者
  • 相続財産を管理している人
  • 不動産の共有者

被相続人(亡くなった方)の債権者は、相続財産清算人がいなければ、債権の回収ができないため、相続財産清算人の選任が必要となります。

このような相続財産清算人の選任が必要となる利害関係人の申立てでなければ、相続財産清算人は選任されません。

(4) 予納金の納付がない場合

相続財産清算人の選任申立てをすると、家庭裁判所から予納金の納付を求められる場合があります。相続財産を管理するために必要な費用が、相続財産だけでは不足することが予想されるときです。

この場合に予納金の納付がなければ、相続財産清算人の申立ては却下されます。

なお、相続財産を管理するために必要な費用には、相続財産清算人への報酬も含まれます。報酬は、10万円くらいから100万円くらいが多いようです。

基本的には、相続財産から支払いがされるため、相続財産が多くあれば預貯金から必要経費の支払いを行うので、予納金の納付は求められません。

5.相続財産清算人を選任するのに必要な費用

相続財産清算人の選任申立てを行う際に必要となる費用は、以下のとおりです。

  • 収入印紙 800円分
  • 連絡用の郵便切手 1,000円~2,000円(切手金額は申立てする家庭裁判所により異なる)
  • 官報公告費用 5,075円(裁判所の指示があってから納付)
  • 戸籍謄本取得費用 1,000円程度~5,000円程度(取得する書類数によって異なる)

連絡用の郵便切手は、申立てする家庭裁判所によって金額が異なります。申立てをする前に、家庭裁判所へ連絡をして事前に確認すると良いでしょう。

そのほか、家庭裁判所に求められた場合には、予納金を納める必要があります。

6.相続財産清算人選任の申立・必要書類

相続財産清算人を家庭裁判所に選任してもらうためには、「相続財産清算人選任」の家事審判申立てが必要で、以下の種類を添えて申立てます。

  • 家事審判申立書(裁判所指定の形式)
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としての甥姪で死亡している方がいる場合、その甥又は姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)
  • 相続財産清算人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票

このように、申立てに必要な書類は、ケースごとにより多岐にわたります。なお、同じ書類は1通で足ります。

もし、申立て前に入手ができない戸籍等がある場合は、その戸籍等は申立て後に追加提出することもできます。

7.家庭裁判所による審判・選任

「利害関係人」又は「検察官」から相続財産清算人選任の申立てがされると、被相続人との関係や利害関係の有無、相続財産の内容などを考慮して、家庭裁判所は相続財産を管理することに最も適している者を「相続財産清算人」として選任します。

利害関係人の推薦する候補者がいる場合には、その候補者が選ばれることもありますが、公平な第三者であり、清算に適格性を有する専門家として、弁護士や司法書士などが選ばれることが多いです。

「4.相続財産清算人の申立てが却下される場合」で見たとおり、申立人の利害関係が認められない場合や、相続財産清算人の選任が不必要な場合と判断されれば、申立ては却下されます。

相続財産清算人が選任されるまでは、申立ての日から2ヶ月程度は必要です。

8.まとめ

以上が、相続財産清算人の説明です。如何だったでしょうか。

要約すると、相続財産清算人は、①相続人が存在しないときに、②利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所により選任されるもので、③相続財産や相続人を調査し,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行なう役割を持ちます。

相続財産清算人の選任申請を行うことで多いケースは、①債権者として債権の回収をしたいとき、②相続放棄をしたけれど財産管理をしているとき、③特別縁故者として財産分与を受けたいときになります。

もし、ご自身が上記の3つのいずれかに該当する場合は、どの様に進めるのが良いか検討の参考にしてください。 不安な場合は、専門家に相談すると良いでしょう。