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紛争解決条項のこと(2)

紛争解決条項のこと(2)

海外との取引での紛争解決条項について

前回は、日本国内での取引での紛争解決条項について考えてみました。それでは、海外における場合はどうなのでしょうか。
今回は、英文契約での海外との取引における紛争解決条項について考えてみましょう。

1.裁判による紛争解決

海外との取引の英文契約にも、紛争解決の条項として、裁判によるものも当然のようにあります。
これは、日本であろうと海外であろうと同じです。

裁判による紛争解決条項の例としては、次なようなものがあります。

The Parties agree that the exclusive jurisdiction and venue for any action brought between the Parties arising under this Agreement shall be the USA’s state and federal courts sitting in New York, and each of the Parties hereby agrees and submits itself to the exclusive jurisdiction and venue of such courts for such purpose.

<参考薬>

両当事者は、本契約に起因する両当事者間の訴訟の専属的な裁判管轄および裁判地を_ニューヨークにあるアメリカ合衆国の州および連邦の裁判所とすることに合意し、また、いずれの当事者も、これら裁判所の専属的な裁判管轄および裁判地に本契約によって合意しこれに係属する。

それでは、日本でのものと異なり、海外との取引で、裁判による紛争解決条項を設ける際に検討すべき一番の点は何でしょうか。

思うに、裁判による紛争解決の条項を検討する場合の懸念すべき点は、裁判所の判断が妥当なものとなりうるか想定できるか否かというものではないでしょうか。

日本では裁判所が一定程度の信頼を勝ち得ていると思われます。
裁判所が信頼を勝ち得ているのは、裁判官の仕事が、公平中立な立場から公正な判断を下すこととされているからでしょう。

しかし、発展途上国の裁判制度は一般的に信頼性がないといわれています。
共産主義国家における裁判制度は、裁判所が直接共産党とつながっており、また、地方では法的素養のない方が裁判官を務めていたとの話も聞いたことがあります。

日本における常識は、通用しないこともありますので、日本国外での裁判による紛争解決は避けた方が良いかもしれません。勿論、例外はあるかもしれませんが…

2. 日本を裁判管轄とした場合

それでは、裁判管轄を日本にすれば良いのでしょうか。
これも検討が必要です。

もし、日本において裁判をして勝訴をしたとしても、相手方が判示された内容を守らない可能性があります。
この場合、勝訴判決が相手方の国で強制執行できるか否かの問題が生じます。

海外で強制執行ができるか否かは、基本的に各国の民事訴訟法の規定によって判断されることになっています。
これに関しては、「相互保証主義」と呼ばれる基準を採用している国が多く、「相互保証主義」では、外国判決の承認・執行の請求があったときには、その国においても自国で出された判決の承認・執行が可能な法制度となっているかどうかで判断することになります。

つまり相手方の国の判決が日本でも承認・執行できると日本において判断されているのであれば、お互い様で、相手方の国でも日本の判決を執行できるということになるのです。

そのため、取引先の国で日本の判決が執行できるのかは、個別に過去の日本での扱いやその外国での扱いを調べないと判断できないということになります。

さらに、相手方の国でも日本の判決を執行できる場合でも、なかなか大変です。
まず、日本の裁判所に判決の執行を求める執行裁判をおこし、その判決を得る必要があります。
その後の手続きは、各国の裁判制度や手続きは異なるため、具体的な手続きについては、判決の執行を希望する国の法律などを、外務省の在外公館等に確認する必要があります。

また、日本の裁判所の判決は日本文でなされますので、相手国の言語への翻訳等も必要です。

ということで、裁判による紛争解決は、たとえ日本を裁判管轄としても、その実現に関しハードルが相当高そうです。

3.仲裁による紛争解決

それでは、前回に確認した仲裁という紛争解決手段はどうでしょうか。
ちなみに、仲裁による紛争解決条項の例としては、次のようなものがあります。

All disputes, controversies or differences arising out of or in connection with this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the Commercial Arbitration Rules of The Japan Commercial Arbitration Association. The place of the arbitration shall be Tokyo, Japan.

<参考訳>

本契約に起因し又は関連するすべての紛争、論争又は意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って仲裁により最終的に解決されるものとする。仲裁地は日本国の東京とする。

仲裁の判断には、裁判所の確定判決と同じ効力が付与され、強制執行が可能です。また、ニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)の締約国は、本コラム記載時点で172か国以上もあり、締結国では強制執行ができるので、裁判での紛争解決条項の懸念事項もおおかた払拭できます。https://www.newyorkconvention.org/contracting-states

なお、台湾については、ニューヨーク条約の締約国ではありませんが、ニューヨーク条約に対応する国内法があります。

従い、事実上、海外との取引契約書での紛争解決条項は、ほぼ仲裁一択と言ってよいでしょう。(尤も、予測可能性が高い案件であれば、裁判による紛争解決ということもあり得ます。)

4.裁判による紛争解決と仲裁による紛争解決の費用等の比較

裁判による紛争解決と仲裁によるそれとを比較すると、前回でお話しした通り、裁判では、裁判期間が長引けば、弁護士に支払う費用は高価になりがちです。一方、仲裁においては、仲裁人に支払う費用は高めですが、仲裁機関に対する費用は低めですし、解決に要する期間は短めですので、弁護士に支払う費用は比較的安価な傾向があります。

また、国際仲裁では、以前から、電話やテレビ会議等で事前準備会合などが行われていました。
さらに、新型コロナウィルスの感染拡大により海外渡航は禁止された経緯から、リアルの対面を前提とする仲裁審問はすっかりオンライン化して、Zoom等を利用した証人尋問手続(審問)が実施されています。
なお、オンライン審問のメリットとしては海外渡航の時間や費用が低廉化され、多数当事者の日程調整が容易であることなどがあります。

裁判では、いまだ裁判所に赴くことが基本であるようですので、仲裁の方にメリットがありそうです。
尤も、日本以外でも裁判でもIT化を進める傾向にあるようで、費用面ではそんなに差がなくなっていくのかもしれません。

4.まとめ

今回の確認事項をまとめてみましょう。

① 海外での裁判による紛争解決は、その判断の予見性が低い。
② 裁判管轄を日本にして、勝訴をしたとしても、強制執行の面で不安が残る。
③ 仲裁であれば、ニューヨーク条約の加盟国であれば、強制執行可能。
④ ニューヨーク条約の加盟国は多く、事実上、海外との取引契約の紛争解決条項はほぼ仲裁一択。
⑤ 裁判より仲裁の方が比較的安価になりがち。

いかがだったでしょうか。
海外との取引の契約書を検討する際の参考としてください。