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【実務解説】外国人の遺言書作成と効力|日本資産がある場合の準拠法と実務

【実務解説】外国人の遺言書作成と効力|日本資産がある場合の準拠法と実務

外国人が日本に資産を持つ場合、遺言の効力は日本法ではなく「本国法」によって判断されるのが原則です。

結論の要約(Summary)

🔹 English Summary

When a foreign national owns assets in Japan, the substantive validity of a will is generally governed by the testator’s national law under Japan’s conflict-of-laws rules. However, issues concerning formal validity and the registration of Japanese real estate require careful consideration of Japanese law as well.

Accordingly, executing a notarized will in Japan does not automatically ensure full legal effectiveness. Matters such as testamentary capacity, forced heirship rules, spousal protection regimes, and differences among state laws in federal jurisdictions must be examined under the applicable national law.

Cross-border estate planning for foreign nationals requires identifying which legal system governs each aspect of the will and coordinating foreign law with Japanese procedural practice, particularly with respect to future inheritance registration.

■結論(日本語)

外国人が日本に資産を有する場合、遺言の実質的効力は原則として被相続人の本国法により判断されます(通則法37条)。しかし、遺言の方式の有効性や、日本に所在する不動産の相続登記との関係では、日本法の検討も不可欠です。

したがって、日本で公正証書遺言を作成すれば直ちに万全というわけではなく、本国法上の遺言能力、遺留分制度、配偶者保護規定、州法の差異などを踏まえた設計が必要となります。

外国人の遺言は、「どこで作るか」ではなく、「どの法律がどの部分を規律するか」を整理したうえで設計することが重要です。国際私法と日本実務を横断した検討が不可欠です。

この記事でわかること

  • 外国人の遺言の準拠法の決まり方
  • 方式準拠法と実質的効力の違い
  • 本国法と日本法の関係
  • 公正証書遺言の位置づけ
  • 州法国家(米国など)の注意点
  • 日本不動産と相続登記の関係

外国人の遺言は、日本人の遺言と異なり、国際私法の視点が不可欠です。この記事では理論と実務の双方から整理します。

1.遺言の準拠法の決定

原則:外国人の遺言の効力は本国法で判断されます。

日本では、遺言の実質的効力は、「法の適用に関する通則法」(平成18年6月21日法律第78号)の第37条第1項に「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による」とあり、原則として被相続人の本国法によります。

したがって、日本に資産があるからといって当然に日本法が適用されるわけではありません。

本国法により、

  • 遺留分の有無
  • 相続人の範囲
  • 遺言能力
  • 遺言の撤回

などが判断されます。

2.方式準拠法と実質的効力の違い

遺言には、

  • 内容の有効性(実質的効力)
  • 作成形式の有効性(方式)

という二つの問題があります。

方式については、作成地法など複数の接続点が認められる場合があり、日本で作成した遺言が有効となる余地が広く認められています。

これは、いわゆる「遺言の尊重(favor testamenti)」という考え方によるものです。

3.本国法と日本法の関係

外国人が日本で遺言を作成した場合でも、

  • 実質的効力 → 本国法
  • 方式 → 日本法で有効となる可能性

という構造になります。

もっとも、本国法が特別な制限を設けている場合には、その影響を受けることがあります。

4.公正証書遺言の位置づけ

日本で作成する公正証書遺言は、方式面での安全性が高く、後日の紛争防止に有効です。

もっとも、公正証書であれば常に本国法上も有効であるとは限りません。

本国法における

  • 遺言能力
  • 遺留分制度
  • 強制相続分

などとの整合性を確認する必要があります。

5.州法国家の場合(米国例)

米国は地域的不統一法国であり、州法ごとに相続・遺言制度が異なります。

たとえばカリフォルニア州では、

  • コミュニティ・プロパティ制度
  • 配偶者保護規定

が存在します。

そのため、日本で作成した遺言があっても、州法上の制限により修正を受ける可能性があります。

州の特定と州法内容の確認が不可欠です。

6.遺言と日本不動産の相続登記

日本に不動産がある場合、遺言に基づき所有権移転登記を行うことになります。

この場合、

  • 遺言の有効性
  • 相続人の確定
  • 本国法内容の確認

が前提となります。

登記原因証明情報として、

  • 遺言書
  • 本国法に関する資料
  • 相続人関係資料

などの整理が必要となります。

7.反致が問題となる場合

本国法がさらに所在地法を指定する場合、反致が問題となることがあります。

反致とは、本国法がさらに別の国の法律を適用すべきと定める場合に、その指定を受け入れるかどうかを検討する問題です。

もっとも、常に機械的に日本法へ戻るわけではなく、

  • 本国法の抵触規定の性質
  • 日本法における反致の範囲

を慎重に検討する必要があります。

8.実務上の留意点
  • 二重遺言の調整(本国と日本)
  • 翻訳文の正確性
  • 公証手続の適切な実施
  • 将来の相続登記を見据えた文言設計

生前の段階での設計が、相続時の負担を大きく左右します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1.外国人でも日本で公正証書遺言を作成できますか?
可能です。ただし、本国法上の有効性も確認する必要があります。

Q2.遺言を日本で作れば日本法が適用されますか?
原則として実質的効力は本国法が基準となります。

Q3.海外にも資産がある場合はどうなりますか?
各国の法制度を踏まえた全体設計が必要です。

まとめ

如何だったでしょうか。外国人の方の遺言書作成は、いろいろな法律が絡み合い、日本人が作成するものより、複雑であることをご理解いただけましたでしょうか。

外国人が日本に資産を有する場合の遺言では、

  • 遺言の実質的効力は本国法で判断される
  • 方式は日本法でも有効となる可能性がある
  • 州法国家では州法の確認が必要
  • 日本不動産の相続登記を見据えた設計が重要

国際相続では、準拠法と実務手続を整理した遺言設計が不可欠です。

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