合同会社を株式会社に変更するメリットについて
最初は合同会社として会社を設立したものの、組織変更して株式会社に変更するケースもあります。
合同会社を株式会社に変更するメリット
株式会社に変更することで得られるメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。 クライアント等からいろいろ伺うと、次のようなメリットがあるようです。
①信用度が増す
随分ポピュラーになったとはいえ、合同会社は比較的新しい組織であり、耳慣れない人も多い会社組織です。 信用度という意味合いでは、どうしても株式会社に及びません。
また会社設立にあたるハードルも低いため、より複雑な手順で設立された株式会社よりも信頼度は低いとされます。
そのため、合同会社が株式会社に組織変更すると信用度が増すとされます。 取引先から信頼度が増せば、取引の幅が広がります。 また金融機関から信頼度が高いと判断されれば、それだけ融資が受けやすくなります。
②外部から資金調達が可能に
合同会社と株式会社の大きな違いが資金調達方法です。 合同会社の出資者は社員ですが、株式会社は株を発行することで出資者を募り、外部からも資金調達ができます。
③初めから株式会社にするより低コスト
初めから株式会社として設立する場合、最低でも約20万円の費用が必要です。 一方、合同会社から株式会社に変更する場合には、合同会社の設立費用+変更にかかる法定費用で済むため5万円程ですが、コスト削減が可能です。
変更するための流れ
続いて、合同会社から株式会社に変更するための手続きの流れについて、みていきましょう。
合同会社が株式会社へ組織変更をする場合、大きく次の3つの手続きが必要になります。
- 組織変更計画の作成
- 債権者保護手続き
- 変更登記申請
合同会社からどのような組織に変更していくのかを計画し、その内容を書面にします。
記載すべき内容は以下の通りです。
- 組織変更後の株式会社の商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数
- 上記の他定款で定める事項
- 役員の氏名
- 各社員に割当てる株式の数またはその数の算定方法、割当に関する事項
- 組織変更の効力発生日 等
なお、組織変更後の代表取締役については、組織変更の効力発生後に代表取締役の選定手続きを行いますが、組織変更後最初の代表取締役として定款で直接選定することも認められています。
組織変更計画書の作成後、組織変更する合同会社は、組織変更計画で定めた組織変更の効力発生日の前日までに、定款で別段の定めがある場合を除き、組織変更についての総社員の同意を得る必要があります。株式会社の株主総会と似たイメージで、会社の所有者全員の同意が必要なわけです。
組織変更する合同会社は、以下の内容を官報に公告し、かつ、知れたる債権者へ個別の催告をする必要があります。ただし、会社が官報の他、定款で定めた公告方法に従って公告をするときは、知れたる債権者への個別の催告を省略することができます。
- 組織変更をする旨
- 債権者が一定の期間(1ヶ月を下らない期間)内に異議を述べることができる旨
債権者保護手続きを行わなければならない理由は、会社として事業を営んでいると、さまざまな企業と取引しますが、その中には売掛債権を持っている取引先や、融資債権を持っている金融機関など「債権者」が存在します。
その債権者の権利を保護するために、債権者に内密に会社組織を変更することはできません。事前に債権者に対して組織変更を通知し承諾を得る必要があるわけです。
もし債権者がいない場合には、個別に催告する方法は省けますが、官報への掲載は必須です。
債権者保護の手続きをして、債権者から異議申し立てがない場合には組織変更ができます。
株式会社へと組織変更を果たしたら、登記上も合同会社から株式会社に変更しなければなりません。
組織変更の効力発行日から2週間以内に2つの手続きを同時にします。
- 株式会社の設立登記
- 合同会社の解散登記
申請後は法務局による審査が必要になるため、手続きは1週間ほどかかります。
この変更登記が完了後、初めて株式会社の登記簿謄本が取得できます。
手続きに必要な期間
変更にかかる期間は約40日ほどかかります。 これは債権者保護の手続きに時間がかかるためです。
官報には最低でも1カ月以上は掲載し、異議申し立てがないかを待つ必要があるためです。また変更登記自体も上記でご説明した通り、1週間程度審査期間が必要なので、最低でも約40日はかかるのです。
必要な費用
合同会社から株式会社に変更するには、約10万円の費用がかかります。 明細は下記の通りで、これらの合計が約10万円です。
- 株式会社設立登記の登録免許税:3万円
- 合同会社解散登記の登録免許税:3万円
- 官報公告費用:3.5~4万円
まとめ
少ない費用で会社設立が可能な合同会社から株式会社への変更は、初めから株式会社として設立するより費用が少ないメリットがあります。
ただし、変更自体には最低でも約40日かかるといったことも認識する必要があります。
事業が軌道にのり事業拡大が見えてきり、外部からの資金調達を目指したい場合には、株式会社化を目指すとよいでしょう。