土日祝もご対応いたします。土日祝の方が連絡を取りやすいです。

被相続人がフィリピン国籍の場合の相続|プロベイト・相続分・遺産税を日本との関係も含めて解説

被相続人がフィリピン国籍の場合の相続|プロベイト・相続分・遺産税を日本との関係も含めて解説

被相続人がフィリピン国籍である場合、日本人同士の相続とは大きく異なるルールが適用されます。特に「適用される法律」「相続手続」「税務」の3点について、正しく理解しておくことが重要です。

本コラムでは、フィリピン国籍者の相続に関する基本的な考え方と、日本との関係を実務的に解説します。

■ 本コラムのポイント

フィリピン国籍者の相続では、以下の点が重要です。

  • フィリピン法が適用される(準拠法)
  • 相続分は強制的に定められている(遺留分の強さ)
  • プロベイトが必要になる可能性が高い
  • フィリピンと日本の双方で課税される可能性がある
1.準拠法(どの法律が適用されるか)

日本の国際私法(法の適用に関する通則法)では、相続は「被相続人の本国法」によるとされています。

そのため、被相続人がフィリピン国籍である場合には、相続人や相続分はフィリピン法に基づいて決定されます。

これは、日本にある財産についても原則として同様です。

※ただし、国際私法上の例外(反致等)により取扱いが異なる場合があります。

なお、フィリピンは「人的不統一国」とされ、相続についてはフィリピン民法のほか、イスラム教徒にはムスリム身分法が適用される場合があります。

2.フィリピン相続の特徴(遺留分の強さ)

フィリピンの相続制度では、一定の相続人に対して「強制相続分(legitime)」が認められています。

これは、日本の遺留分よりも強い制度であり、被相続人の意思による自由な財産処分が大きく制限されます。

例えば、配偶者や子がいる場合には、その一定割合を必ず確保しなければならず、遺言によってもこれを排除することはできません。

基本的には、総財産の1/2がLegitime(強制相続分)、残りの1/2がFree Portion(遺言で自由に処分できる部分)となるケースが多いです。

また、嫡出子、非嫡出子、配偶者がいる場合、複雑な割合で配分が計算されます。これは個別に検討する必要があります。

3.相続手続(プロベイト)

フィリピンでは、相続手続において「プロベイト(Probate)」と呼ばれる裁判手続が重要な役割を果たします。

プロベイトとは、裁判所の関与のもとで遺産を確定し、債務の清算を行い、相続人に分配する手続です。

被相続人がフィリピン国籍である場合、フィリピン国内の財産については、このプロベイトが必要となるケースが一般的です。

4.Small Estate(少額遺産手続)

遺産の規模や状況によっては、プロベイトを経ずに簡易的な手続が認められる場合があります。

ただし、適用要件は限定的であり、実務上は慎重な判断が必要です。

具体的には、被相続人の遺産総額が一定額以下である場合などに、Small Estate Affidavit(少額遺産宣誓書)という書類を用いた簡易な手続が認められる場合があります。

5.外国人(日本人)が相続人となる場合

相続人の中に日本人が含まれる場合でも、相続そのものはフィリピン法に従って処理されます。

また、フィリピンでは外国人による土地所有が原則禁止されていますが、相続による取得については例外的に認められています。

ただし、取得後の管理や処分については制約があるため注意が必要です。

※詳しくは別記事【フィリピンに財産がある相続|手続・遺産税・プロベイト・日本との違いを実務解説】を参照ください。

6.フィリピンの遺産税

フィリピンでは、遺産に対して「遺産税(Estate Tax)」が課されます。

現在は、遺産総額に対して一律6%の税率が適用されます。(一定の基礎控除等あり)

この税金は遺産全体に対して課税されるものであり、実務上は相続人等が申告・納付を行います。

なお、6%の税率適用には、被相続人の死亡から一定期間内に申告・納付が必要で、基礎控除や一定の控除項目が存在するため、実質負担が軽減されるケースも多いです。

※申告期限や控除の内容は個別事情により異なるため、事前の確認が重要です。

7.日本の相続税との関係

相続人が日本に居住している場合、日本の相続税も問題となります。

日本では、相続人の住所や被相続人の住所等に応じて、国外財産を含めた課税が行われることがあります。

そのため、フィリピンの財産についても日本で課税される可能性があります。

8.二重課税への対応

フィリピンと日本の双方で課税される場合、日本では外国税額控除の適用により一定の調整が可能です。

しかし、両国間には相続税に関する租税条約が存在しないため、完全に二重課税が排除されるわけではありません。

上記のような二重課税が生じる場合には、日本の制度上は「外国税額控除」により、一定の範囲で調整を行うことができます。

9.実務上の注意点

フィリピン国籍者の相続では、以下の点に特に注意が必要です。

  • フィリピン法に基づく相続分の強制
  • プロベイトによる手続の長期化
  • 現地での対応(弁護士・書類取得等)が必要
  • 日本とフィリピンの税務を同時に検討する必要がある
  • フィリピンでの相続手続と日本の相続手続が並行して進むケースがある
10.まとめ

被相続人がフィリピン国籍である場合、相続全体がフィリピン法を基準として進む点が最大の特徴です。

特に、強制相続分やプロベイト制度は日本と大きく異なるため、事前に制度の違いを理解しておくことが重要です。

また、日本との関係では税務上の検討も不可欠であり、両国の制度を踏まえた対応が求められます。

※本コラムは、被相続人がフィリピン国籍である場合の相続に関する実務経験および過去の取扱事例の分析に基づき、プロベイト手続、準拠法(本国法主義)に基づく相続分の考え方、遺産税等に関する一般的な傾向や実務上の留意点を整理したものです。もっとも、個別具体的な事情、フィリピン法および日本法の適用関係や運用の違いにより結論が異なる場合があります。最終的な判断にあたっては、現地専門家および日本の専門家への個別相談を前提とし、本コラムの内容が結果を保証するものではない点にご留意ください。