海外に移住される方との業務委託契約の話
海外に居住する方を受託者とする業務委託契約書を作成する機会がありました。
このクライアントは、日本国内で業務を委託している方(日本国籍)が、海外に移住することになるので、それに対応した契約書の必要性が生じ、作成を依頼されたのです。
大使館に面接に行くにあたり、移住したときの収入が確保されていることを証明する必要があり、そのためにも証拠書面としての業務委託契約書が要求されるとのことでした。
契約を作成するうえで、まず確認したのは、業務の内容です。
何といっても、委託する業務の内容を正確に記載することは最重要になります。
業務の概要を伺うと、受託者はデザインをされている方で、当該クライアントの依頼により、デザイン作品を提供し、クライアントの指定するウェブサイトに納品するそうです。
次に確認及び検討したのは、課税地の問題です。
ご存じの方も多いと思いますが、業務を実施した国(この場合は移住する国)で税金が課されることが基本です。
しかし、多国間での課税の問題は、移住先での居住期間(日本での滞在期間が多ければ日本で課税される)等によっても異なるうえ、二重課税を避けるため日本は多くの国と租税条約(二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止を主たる内容とするもの)を結んでおり、その判断には慎重な分析が必要です。
しかも、インターネット等を通じての役務の提供です。
これに関しては、国税庁が公表している「電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準」というものがあり、消費税が課されるのか否かも検討の必要があります。 知り合いの税理士の先生にご相談しながら、基本的な契約スキームを固めました。
本来は英文契約で作成する方が良い面が多いことは以前にもお書きしました。
しかし、クライアント及び受託者の方からの要望により、両者が日本人であることから、共通言語である日本文による契約にして、必要な条件を落とし込みます。 勿論、大使館へのことは考慮をして微修正はしましたが…
さらに、デザインに係る知的財産権の取扱いも重要な項目です。
いろいろ頭を悩ませましたが、何とかクライアントにも受託者の方にも喜んでいただけるものを仕上げることができました。
様々な場面を想定して、契約は作成する必要があることを思い出させてくれた案件でした。