商標権譲渡のおはなし

商標権譲渡のおはなし

それは、

平成25年の年明けで正月気分がまだ完全に抜け切らないときでした。

さるクライアントから、「商標権を取得したいのだが、すでに他者が持つ商標があって、取れない。相談に乗ってくれないか。」という話がありました。

ご存知の方も多いとは思いますが、念のために申し上げますと、商標とは商品を購入したり、サービス(役務)の提供を受ける消費者(需要者)が、その商品やサービス(役務)を提供する企業等(「出所」といいます。)を認識できるように使用される標識(文字、図形、記号、立体的形状やこれらの組み合わせ、これに色彩を加えたマーク)をいいます。

消費者は、この標章を知覚することで、商品や役務の出所を認識し、購入したい商品や提供を受けたいサービス(役務)を選択することができるわけです。

商品の販売やサービス(役務)の提供を継続すると、しかもその商品やサービス(役務)の質が一定以上のものであれば、業務上の信用力(ブランド)がついていきますが、販売や提供のときに使用される標章にこの信用力(ブランド)が化体することになり、財産的価値が備わるようになります。

商標法第1条には次のように記されています。

(目的) 

第一条  この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

この標章は、特許庁に出願・登録すると、商標権として保護の対象となります。商標権を取得すると、権利者は独占的に使用できるようになります。

さて話を元に戻しますと、そのクライアントは、商標出願に関して、ほぼ自前でおやりになるところでしたので、冒頭の相談にあったわけです。

確認してみると、当該クライアントが取得したいと考えていた商標は役務に関するもので、これに関して先行する類似した登録商標をもつ企業がありました。その先行類似商標を保有する企業は地方都市を地盤とする会社で、当該類似商標はその地方都市で展開しているだけでした。

そこで、クライアントに対してこのようなスキームを提案してみました。

「類似商標を持つ会社に、われわれが取得したい商標を出願・登録してもらい、登録後の商標の譲渡を受けたらどうですか? 相手方は一地方都市で展開しているだけですから、われられと利害の対立は少ないと思われ、この提案を受け入れる可能性は高いと思います。手続き等に関しては相手方と契約を締結して、契約を履行してもらうのです。 もちろん、登録等にかかる費用は当方側が持つことになりますが…」

クライアントは、私の提案を受け入れ、その類似商標を持つ会社に対して上記スキームに基づく申し入れを行いました。

その会社もわれわれの申し入れを受け入れていただき、弁理士の先生にお願いして必要な商標の出願・登録をしたのち、登録後の商標は無事にクライアントに譲渡されました。

先行する商標等がある場面では、ラインセンスを受ける方法もありますが、企業の戦略を考えれば商標を保有したほうがよい場合もあります。

企業により方針は異なりますが、このクライアントは、「重要な商標は自社で保有する」という明確なポリシーを持っておられたので、上記の提案になったわけです。

最初の相談を受けたときから無事に権利譲渡されるまで約1年間がかかりましたが、このクライアントには大変喜んでいただきました。

私としても、皆さんがハッピーになった楽しい仕事でした。