
フィリピンに財産がある相続|手続・遺産税・プロベイト・日本との違いを実務解説
フィリピンに不動産や預金などの財産がある場合、日本の相続とは異なるルールが適用されるため注意が必要です。日本の相続と同じ感覚で進めると、手続が進まないケースも少なくありません。
特に「どの法律が適用されるか」「どのような手続が必要か」「税金はどうなるか」の3点が重要となります。
本コラムでは、フィリピンにおける相続の基本と、日本との関係を実務的に解説します。
フィリピン相続で重要となるのは以下の3点です。
- どの国の法律が適用されるか(準拠法)
- 相続手続(プロベイトの要否)
- 遺産税(フィリピン+日本)
これらを理解することで、手続の遅延や二重課税のリスクを回避できます。
相続においてまず問題となるのが「どの法律に従うか」です。
日本では、原則として「被相続人の本国法」が適用されます。そのため、日本人が亡くなった場合には、フィリピンにある財産であっても、日本法に基づいて相続人や相続分が決まることになります。
一方、フィリピンでも原則として「被相続人の国籍法」が適用されるため、日本人の場合は日本法が基準となります。
ただし、現地での手続や不動産の取扱いについては、フィリピン法上の手続が別途必要となる点に注意が必要です。
※亡くなられた方が、フィリピン国籍である場合については、別コラムを確認ください。【被相続人がフィリピン国籍の場合の相続|プロベイト・相続分・遺産税を日本との関係も含めて解説】
フィリピンの相続で特徴的なのが「プロベイト(Probate)」と呼ばれる裁判手続です。
プロベイト(Probate)とは、裁判所の関与のもとで、故人の財産(不動産・口座など)を正式に管理・精算し、名義変更や分配を行うための手続であり、遺言書の有効性を確認するプロセスも含まれます。
日本では、遺産分割協議により比較的柔軟に相続手続を進めることができますが、フィリピンでは裁判所の関与が必要となるケースが多く、手続が長期化する傾向があります。(数か月〜年単位となることもあります。)
※なお、ハワイに住んでいるアメリカ人が日本に不動産を所有していた場合には、日本にある不動産の遺産相続については、日本の相続法が適用になります。
一定の条件を満たす場合には、時間と費用がかかる通常の裁判所手続(プロベイト)を経ずに簡易的な手続が認められることがあります。これが「Small Estate(少額遺産)」の制度です。
ただし、適用には厳格な要件があり、すべてのケースで利用できるわけではありません。
具体的には、被相続人の遺産総額が一定額以下である場合などに、Small Estate Affidavit(少額遺産宣誓書)という書類を用いた簡易な手続が認められる場合があります。
フィリピンでは、外国人による土地の所有は原則として禁止されています。
もっとも、相続の場合には例外的に取得が認められており、日本人が相続によって土地を取得すること自体は可能です。
ただし、その後の処分や名義変更には注意が必要となります。
外国人はフィリピンの土地を直接所有できないため、実務上は、相続時に土地の売却が求められるケースもあります。
※なお、土地所有は禁止されていますが、コンドミニアム(分譲マンション)や建物の所有は認められています。外国人や外国法人は、1つのプロジェクトの全戸数の最大40%までコンドミニアムユニットを所有可能です。
フィリピンでは、相続に対して「遺産税(Estate Tax)」が課されます。
2018年の税制改正後の現在の制度では、遺産総額に対して一律6%の税率が適用されます。
この税金は、遺産全体に対して課税されるものであり、実務上は相続人等が申告・納付を行います。
なお、6%の税率適用には、被相続人の死亡から一定期間内に申告・納付が必要で、基礎控除や一定の控除項目が存在するため、実質負担が軽減されるケースも多いです。
日本人が亡くなった場合、日本の相続税も問題となります。
日本では、一定の要件を満たす場合には「全世界財産」に対して課税されるため、フィリピンの財産も日本の相続税の対象となる可能性があります。
その結果、フィリピンと日本の双方で課税される、いわゆる「二重課税」の問題が生じます。
上記のような二重課税が生じる場合には、日本の制度上は「外国税額控除」により、一定の範囲で調整が行われます。
ただし、フィリピンとの間には相続税に関する租税条約が存在しないため、完全に二重課税が排除されるわけではありません。
相続税条約がないため、日本側で「外国税額控除」を適用し、フィリピンで納付した税額を日本の相続税から控除する形で調整を行う必要があります。
フィリピン相続では、以下の点に特に注意が必要です。
- プロベイトにより手続が長期化する可能性
- 現地での書類取得や手続対応が必要
- 日本とフィリピンの税務を同時に検討する必要がある
- 日本とフィリピンで手続が並行して進むケースがある
これらを事前に把握しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
フィリピンに財産がある相続では、日本とフィリピンの制度の違いを踏まえて、手続と税務を一体として検討することが重要です。
特に、プロベイトの要否や遺産税の取扱いは、日本の相続とは大きく異なるため、早い段階で全体像を把握しておくことが重要となります。
※本コラムは、相続実務に関する経験および過去の取扱事例の分析に基づき、一般的な傾向や留意点を整理したものです。もっとも、個別具体的な事情や各国法制、運用の違いにより結論が異なる場合がありますので、最終的な判断にあたっては専門家への個別相談を前提とし、本コラムの内容が結果を保証するものではない点にご留意ください。
