土日祝もご対応いたします。土日祝の方が連絡を取りやすいです。

ハワイ不動産の相続は日本と別物|プロベイト・準拠法・米国遺産税の実務

ハワイ不動産の相続は日本と別物|プロベイト・準拠法・米国遺産税の実務

ハワイは、日本人にも人気のある観光地で、多くの資産をお持ちの方の中には、ハワイにも資産をお持ちの方がいらっしゃいます。今回は、ハワイに資産をお持ちの方が亡くなった際の相続について考えてみましょう。

ハワイの資産については、日本の相続とは異なる点が多いため、注意が必要です。

本コラムでは、ハワイ不動産・預金の相続について、手続・準拠法・税務の3つの観点から整理します。

■ 本コラムのポイント

ハワイに不動産や預金がある場合の相続は、日本の相続とは大きく異なります。特に重要なポイントは次のとおりです。

  • ハワイ財産がある場合、日本だけで相続は完結しない
     → 現地の裁判手続(プロベイト)が関与
  • 財産ごとに適用される法律が異なる
     → 不動産はハワイ法、預金は日本法となるケースあり
  • 相続分の考え方が日本と大きく異なる
     → 配偶者が全て相続するケースもあり得る
  • 実務上、プロベイトはほぼ不可避
     → 預金のみでも必要になることが多い
  • 税務は日本+米国の二重構造
     → 日本の相続税+米国の遺産税の検討が必要

▶ したがって、
「どの法律が適用されるか」と「どの手続が必要か」を分けて考えることが重要です。

1.ハワイ財産がある場合の相続の基本的な考え方

日本人が死亡し、ハワイに不動産や銀行預金等の財産を有していた場合、日本に居住していたとしても、日本だけで完結する相続手続は原則としてできません。

特に以下の点が重要です。

  • ハワイに所在する財産は、現地手続(プロベイト)の関与が問題となる
  • 日本法とハワイ法で、相続人や相続分の考え方が異なる
  • 財産の種類(不動産か預金か)により適用法が分かれる可能性がある

したがって、
「どの法律が適用されるか(準拠法)」と「どの手続が必要か」
を分けて検討する必要があります。

2.準拠法(どの国の法律が適用されるか)
2-1.日本法の考え方(通則法

日本の国際私法では、

  • 相続は「被相続人の本国法」によります。(法律の適用に関する通則法36条)

つまり、日本人が死亡した場合は、
▶ 原則として「日本法(民法)」が適用されます。(相続統一主義)

2-2.ハワイ法の考え方(ドミサイル基準+分割主義)

ハワイ(米国)の国際私法では、以下の2つが特徴です。

① ドミサイル(domicile 恒久的な生活の本拠地)基準

  • 被相続人の「ドミサイル(domicile 恒久的な生活の本拠地)」の法律が基本

相続の分割主義

財産ごとに適用法が異なります。

財産の種類適用される法律
不動産所在地法(ハワイにあればハワイ法)
動産・預金等ドミサイルの法律

※なお、ハワイに住んでいるアメリカ人が日本に不動産を所有していた場合には、日本にある不動産の遺産相続については、日本の相続法が適用になります。

【準拠法の整理】

・不動産 → ハワイ法
・預金・動産 → ドミサイル法(日本になることが多い)

3.結論:典型パターン

日本在住の日本人が死亡し、
「ハワイにマンション+銀行預金」がある場合は、一般的には次のようになります。

※本内容は一般的な整理であり、個別事情により結論が異なる場合があります。

  • 不動産(マンション)
     → ハワイ法が適用
  • 銀行預金
     → 日本法が適用

同一の被相続人の相続でも、財産ごとに適用法が分かれる点に留意が必要です。法定相続分や遺留分の判断を誤る可能性があります。

4.ハワイのプロベイト手続(Probate)とは

▶ 裁判所が関与する相続手続

  • 相続人の確定
  • 財産管理人の選任
  • 財産の分配

(1)不動産

ハワイ所在の不動産については、

原則としてプロベイト手続が必要

理由:

  • 相続人が直接処分権限を証明できない
  • 裁判所による「財産管理人」の選任が必要

(2)銀行預金

被相続人が日本に在住する日本人の場合、ハワイに存在する動産や流動資産については、日本の国際私法によってもハワイの国際私法によっても、被相続人のドミサイルがある日本法が適用されるようにも思われます。

しかし、ハワイ所在の動産や流動資産について日本法が準拠法となり、日本法に従って相続人や相続分が決定される場合であっても、実務上は、財産の管理についてはハワイの手続きによることになり、結局はハワイ所在の動産や流動資産についてハワイのプロベイト手続きを行う必要が生じる場合があります。

つまり、

理論上は日本法が適用される場合でも、

実務上はプロベイトが必要になるケースが多い

理由:

  • 銀行が現地裁判所の証明(Grant)を要求する
  • 日本の戸籍等だけでは払戻しに応じないことが多い

※銀行ごとの内部規定により対応が大きく異なる点にも注意が必要です。

被相続人が死亡してから少なくとも5年が経過している場合は、通常のプロベイト手続より財産管理手続の一部を省略してハワイの裁判所で相続人の確定手続等を行うことができる場合があり、その場合は通常のプロベイト手続より簡易な手続でプロベイト手続が終了することもあります。

(3)金額基準

相続の対象として銀行預金がある場合、ハワイの州法では、預金額が10万ドル(約1000万円)以上ある場合にはプロベイト手続が強制的に必要になるのに対し、預金額が10万ドル(約1000万円)以下の場合はプロベイトの手続が不要とされています。

しかしいざ銀行預金を解約しようとすると、銀行からは財産管理人の選任決定書の写しを求められることがほとんどであり、日本ではそのような証明書を入手できないことから、実務上、ハワイの裁判所でのプロベイト手続をとらざるを得ないことになります。

5.ハワイ法と日本法の相続分の考え方の違い(重要ポイント)

事例:配偶者と子1人

  • 日本
     → 配偶者1/2・子1/2
  • ハワイ
     → 子がすべて配偶者との間の子である場合など一定条件下では配偶者が全て相続する

▶ 結論が大きく異なるため、
どの法律が適用されるかを事前に正確に確認する必要があります。

6.プロベイト手続の概要

(1)遺言がある場合

  • プロベイト手続
  • 遺言執行者(executor)選任

(2)遺言がない場合

  • 管理手続
  • 財産管理人(administrator)選任

▶ 裁判所の決定(Grant)により、初めて処分権限が発生

(3)プロベイト申請期間・負担

  • 期間:通常1~2年
  • 現地弁護士関与がほぼ必須
  • 日本書類の翻訳及びアポスティーユが必要
7.プロベイト回避の主な方法

以上のように、ハワイに財産を所有する場合は、基本的にはプロベイトを申請する必要があります。しかし、プロベイトは避けられるなら、それに越したことはありません。

そこで、プロベイトを避ける方法は、主に次の5つがあります。

(1)Small Estate Affidavit

10万ドル以下の動産(銀行預金等)の場合には、Small Estate Affidavit(少額の遺産にかかる宣誓供述書)を作成することで正式なプロベイト手続きを回避することが出来ます。

(2)ジョイントテナンシー(合有不動産権)

ハワイ州における代表的な不動産の所有形態としては、単独所有(Tenancy of Severalty)、共同所有(Tenants of Common)、夫婦合有所有(Tenants by the Entirety)、合有所有(Joint Tenancy)があります。

単独所有(Tenancy of Severaltyは、不動産を一人で所有すること、共同所有(Tenants of Common)は不動産を複数の個人または法人で所有する形態です。

夫婦合有所有(Tenants by the Entirety)はハワイ州で婚姻関係にある夫婦が所有する形態で、一方が死亡すると自動的に残された配偶者に権利が移転します。

合有所有(Joint Tenancy)は複数の所有者で全体の所有権を持つ形態で、一人が亡くなるとその分は残りの所有者に均等に移転します。

  • 死亡時に自動承継
  • プロベイト不要
    ※日本の贈与税に注意

なお、単独所有(Tenancy of Severalty)と共同所有(Tenants of Common)の場合には、所有権の相続については、日本の単独所有や共有の場合と同様になります。被相続人が、ハワイにおけるマンションを単独所有又は共同所有している場合は、その所有権や持分権の相続については、プロベイトの手続きによって行われることになります。

(3)リビングトラスト(生存信託)

生前にトラスト合意書という書類を作成してリビングトラストを設立し、相続対象の財産をトラストに移して(個人名義の財産をトラスト名義に変更する)管理する方法です。

トラスト合意書には、トラストに移した財産を管理する資産管理人、死後に財産を受け取る相続人などを予め指定しておきます。設立者の死後、管理人はトラスト合意書の指示に基づいて相続人に分配することになります。トラストは遺言書と似たようなものですが、財産管理用の会社のようなもので、死亡時に対象財産は個人の財産ではなくトラストの財産ということになりますので、プロベイトの対象財産はないということになり、プロベイトの手続を回避する方法として利用されることがあります。

  • 死亡時に信託により分配
  • 財産を信託に移転

(4)TODD(Transfer on Death Deed:死亡時譲渡証書)

TODD(Transfer on Death Deed)とは、特殊な不動産譲与証書です。不動産の所有者が生前に証書(TODD)を作成し、ハワイ州の不動産登記所(Bureau of Conveyance)に登記しておくと、所有者が亡くなったときに、当該不動産の所有権が証書に記載された受取人に移転することになります。TODDを作成した不動産所有者は生前に何度でも取消しや撤回を行うことができます。TODDの登記がされている場合には、プロベイトの手続きなしに受取人に名義変更を行うことが可能ですので、プロベイト回避の手段として用いられます。上記の通り、ご主人が資金を提供しながら、夫婦名義のJoint Tenancyとする場合は、ご主人から奥様への贈与税の問題が生じるのに対し、TODDの場合は、ご主人が生存中は不動産の名義はご主人のままですので、奥様への贈与の問題は生じないことになります。

  • 指定受取人へ直接移転
  • プロベイト不要

(5)法人所有

ハワイのマンションを取得する場合に、日本やハワイに会社を設立し、会社名義でマンションを所有することが考えられます。この場合、被相続人が死亡しても、会社の所有権に変動は生じませんので、不動産についてのプロベイトの手続きは必要なくなります。但し、会社の株式をどのようにして承継するかについては別途検討が必要です。日本の会社の場合、日本の会社法に基づいて株式の承継手続きが行われます。ハワイの会社の場合も、ハワイの会社法に基づき、株式の承継を行うことが可能となります。

  • 不動産ではなく「株式の相続」に変換
  • 不動産のプロベイト回避
8.税務(日本+米国の二重構造)
8-1.日本の相続税

日本では、相続人は相続が開始してから10カ月以内に、相続税(inheritance tax)の申告書を提出する必要があります。日本の法律によれば、被相続人の死亡時に、相続人は被相続人の財産を包括承継するのが原則で、相続税は相続人に対して課されるものです。被相続人がハワイにマンションや銀行預金を有していた場合には、これらのマンションや銀行預金についても相続財産の一部として日本で相続税の申告を行うことが必要です。日本の相続人は無制限納税義務者となりますので、ハワイのマンションや銀行預金についても日本の相続税が課せられることになります。

  • 申告期限:10か月
  • 全世界財産課税(無制限納税義務者)
8-2.米国の遺産税(Estate Tax)

一方で、アメリカに所在する財産に対しては、連邦政府に対して納付する連邦遺産税と、州法に基づいて納付する州の遺産税の2種類の遺産税を納付する必要があります。日本の相続税が相続人に対して課されるのと異なり、アメリカの遺産税は、遺産に対して課されるものであるという点で、日本とアメリカの制度は異なります。

アメリカの連邦税については、被相続人が死亡した時に、被相続人や相続人が日本国籍であるかどうか、被相続人や相続人が日本に住所を有していたかどうかは関係ありません。アメリカ国内に所在する財産については相続人や被相続人の国籍や住所に関係なく遺産税の対象となります。不動産(家、アパート、コンドミニアム)や動産(車、家具、芸術品)などの有体物がアメリカ国内に物理的に存在する場合は、米国内の財産とみなされます。また、アメリカの会社が発行した株式、アメリカの投資組合への投資口などの有価証券については、連邦遺産税の目的上はアメリカにある財産とみなされ、課税対象となります。これに対し、州の遺産税が課せられるかどうかは州ごとに異なります。連邦遺産税の申告期限は9カ月とされています。

なお、アメリカの金融機関に預けている銀行預金は、非居住外国人については原則として米国遺産税の課税対象外とされています。※ただし、口座の種類や運用形態によっては例外があります。

外国人に対する米国連邦遺産税は原則として、申告期限までにきちんと申告を行えば、約6万ドル相当の非課税枠(統一税額控除により実質的に非課税)となっていますので、アメリカ国内にある財産の時価(及び生存中に贈与を受けた財産の額)が6万ドルを超える場合には申告対象となり、原則として課税関係が生じ、およそ26~40%の連邦遺産税が課せられることになっています。従って、アメリカにおける遺産税の額は極めて高額になる可能性があります。また、州によっては州法に基づく遺産税が課される場合がありますので、資産規模によっては大きな税負担が生じる可能性があります。

もっとも、ハワイ州にも州遺産税は存在しますが、基礎控除額が高額であるため、日本人の一般的な資産規模では課税対象とならないケースが多いです。

※アメリカには相続税はなく、遺産税があります。

※ハワイ州にも州遺産税は存在しますが、連邦遺産税と統合的に運用されており、一定額までは課税されない仕組みとなっています。

※適用にあたっては、米国での申告(Form706-NA等)が必要となります。

※約6万ドル相当の非課税枠は、本コラム執筆時の額です。

  • 米国内財産に課税
  • 申告期限:9か月

外国人の注意点

  • 基礎控除:6万ドルのみ(非常に低い)

8-3.日米相続税及び贈与税条約

日本は、アメリカとの間で日米相続税及び贈与税条約(Japan-United States: Transfer Tax Agreement (1954))を締結しており、同条約の第4条において、米国が、財産が米国内にあることを理由として、その財産に対して相続税を課税しようとする場合に、一定額の相続税額を控除することを米国に求める規定を設けています。

本条の目的は、アメリカ人であれば相続税額の控除を受けられる場合には、日本人もアメリカ人に適用される控除額をベースとして、遺産全体の米国に所在する遺産の割合に応じて控除を受けられることとし、もって相続税に関するアメリカ人と日本人との間における内外の著しい不均衡の是正及び二重課税の排除を図ることにあります。

したがって、日本人については相続税条約に基づく申告を行うことで、連邦遺産税について、アメリカに6万ドルよりも遺産があっても、アメリカ人に認められている高額な基礎控除額を基準に、日本人にも一定割合で控除が認められる仕組みとなっています。一方アメリカでの申告を怠った場合は、相続税条約に基づくメリットを受けられなくなる可能性がありますので、注意が必要です。

▶ 二重課税の緩和あり

  • 米国人と同様の控除を比例適用
  • 申告しないと適用されない
9.実務上の重要な結論
  • ハワイ不動産がある場合
     ▶ プロベイトはほぼ不可避
  • 預金のみでも
     ▶ 実務上はプロベイトが必要になりやすい
  • 法律は
     ▶ 日本法とハワイ法が混在する
  • 税務は
     ▶ 日本+米国の両方を検討する必要あり
10.まとめ(相談の必要性)

■ ハワイ相続の全体像

① 準拠法
 → 日本法+ハワイ法

② 手続
 → プロベイト(裁判)

③ 税務
 → 日本+米国

ハワイ財産の相続は、

  • 準拠法の衝突
  • 手続の二重構造
  • 税務の国際問題

が複雑に絡みます。

「日本の相続の延長」では対応できない分野です。

特に以下に該当する場合は、早期相談が重要です。

  • ハワイに不動産がある
  • 預金額が一定以上ある
  • 将来の相続対策を考えている

国際相続に精通した専門家への相談を強くおすすめします。

※本コラムは、ハワイ(米国)不動産に関する相続実務の経験および過去の取扱事例の分析に基づき、プロベイト手続、準拠法の判断、米国遺産税等に関する一般的な傾向や実務上の留意点を整理したものです。もっとも、個別具体的な事情、米国(連邦法・州法)および日本法の適用関係や運用の違いにより結論が異なる場合があります。最終的な判断にあたっては、日米双方の専門家への個別相談を前提とし、本コラムの内容が結果を保証するものではない点にご留意ください。