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サムネイルの著作権法上の問題点について

サムネイルの著作権法上の問題点について

スマートフォンやパソコンを利用して、LINEやInstagramなどのSNS、YouTubeなどの動画サイトを閲覧する機会も多いかと思います。

これらを閲覧すると、サムネイルを見ることも多いのではないでしょうか。

サムネイルとは、画像や文書、動画などのコンテンツを縮小して表示されたプレビュー画像のことです。英語で「親指の爪 (thumbnail)」を意味し、親指の爪のように小さいことからこの名前が付けられました。

オリジナルデータを開かずにその内容・中身を確認できるため、インデックスやプレビュー、見本として多く使われています。

サムネイルは、大きいサイズの画像を掲載するより読み込みに時間がかからず負担も少ないこと、同時に多くのファイルデータを一覧化できることなどから、あらゆるサイトで活用されています。

サムネイルの具体例は、次のようなものがあります。

  • パソコンでデータを保存したらフォルダ内に一覧として表示される画像
  • YouTube動画などの静止画として、その一場面を切り取って表示させた画像
  • ニュース記事など、Webサイト内の記事に添えるサイズの小さい画像
  • ショッピングサイト内の商品一覧画像

今回は、サムネイルの著作権法からの問題点について見ていきましょう。

1.著作権法の概要

まずは、著作権法の確認からしましょう。

著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)は、知的財産権の一つである著作権の範囲と内容について定める法律で、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的」としています。(著作権第1条)

権利の主な対象である著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり、文学作品、美術品、音楽、映像などの様々な物が含まれます。

著作権は、「著作物」を創作した者に与えられる、複製、改変、公衆送信、頒布などをされることを制限することができる権利です。第三者(他人)がその著作物を利用したいといってきたときは、権利が制限されているいくつかの場合を除き、条件をつけて利用を許可したり、利用を拒否したりできます。

創作者(著作者)に与えられる権利は、著作物を創作した時点で発生するものであり、創作者(著作者)の人格的な利益を保護する「著作者人格権」と財産的な利益を保護する「著作権(財産権)」の二つに分かれます。

著作者人格権は、著作者だけが持つことができる権利で、譲渡したり、相続したりすることはできません(著作権法第59条)。

一方、著作権(財産権)は、その一部又は全部を譲渡したり相続したりできます。(著作権法第61条第1項) したがって、著作者が、創作した著作物の著作権(財産権)を他人に譲渡している場合、第三者がその著作物を利用する際には権利者(著作権者)の許諾が必要となります。

著作権法は時代の変化に合わせて頻繁に改正されており、IT技術の進化により、インターネット上での著作物の利用が増えているため、最近では特にオンライン上での著作権侵害に対する規制が強化されています。

2.他人の著作物をサムネイルに利用する場合の法的リスク

ショッピングサイトなどでは、サムネイルは商品の一部や特徴を表現しており、第三者(他人)の著作物(美術品など)を撮影する、どこかから入手した画像を活用するなど、第三者(他人)の著作物から作成されることもあります。

第三者の著作物を利用する場合には、著作権者の許諾を得るか、著作権法の例外規定に該当しない限り、利用すること自体が違法となる可能性があります。

著作編法上の例外規定とは、具体的には、著作物を特定の目的のために一部引用する場合などの著作権法が認める範囲内での利用です。ただし、利用量や利用目的などの制約を受けることがあります。引用する場合でいえば、引用する著作物と引用される著作物が明瞭に区分されていること、引用される著作物が全体として、「従」でなければならないこと(主従性)が必要とされています。

なお、自分の作品の一覧として利用するサムネイルであれば、基本的には問題ないと考えられます。

2-1. 著作権上で問題となるケース

以下で、具体的に著作権上で問題となるケースを見ていきましょう。

① 各著作物を無断で引用し、サムネイルに利用する場合
無断で引用した著作物をサムネイルに利用することは「複製」にあたり、著作権法に抵触する可能性が高いです。ショッピングサイト内で他人の商品写真を無断で利用することは、法的に問題が生じる可能性があります。

画像をトリミングするなどの著作物の改変は、同一性保持権(著作者人格権のひとつであり、著作物を勝手に改変等されない権利(著作権法第20条))の侵害にあたるおそれがあります。著作物の特徴的部分がわからなくなっていて、そもそも改変にあたらず、著作権法上の問題にはならないような場合を除き、無断で改変したサムネイル画像を利用することは、法的に問題が生じる可能性があります。

② サムネイルをサーバにアップロードして、アクセス者に送信する場合
サムネイルをアップロードする行為は、利用者がその著作物にアクセスすることを可能にする(「送信可能化」著作権法第2条第1項第9号の5)とともに、アクセスした利用者に画像を見せる行為は「自動公衆送信」(著作権法第2条第1項第9号の4)にあたり、原則として何れも著作権者の許諾が必要です。

2-2.著作権法上で問題とならないケース

それでは、第三者の著作物をサムネイルに利用する際には、著作権侵害にならないのは具体的にどのようなケースでしょうか。以下に見ていきましょう。

① 画像自体を譲渡等しようとする場合
絵画や写真などの画像自体について譲渡や貸与の権限を有する者(つまり、著作物等の所有者等)が、譲渡や貸与をする目的でサムネイル画像を作成、アップロードすることは、一定の条件(画像を一定以下の大きさ・精度にすること等)を満たせば、著作者の許諾を得ずにすることができるとされています(著作権法第47条の2、著作権法施行令第7条の3、著作権法施行規則第4条の2)。

② 黙示の許諾があると認められる場合
インターネット上の公開画像は、誰でも無償かつ自由にアクセスでき、自由に閲覧することを権利者自身が許容していると考えられるとされています。

そのため、ケースにより(例えば、誰でも無償でアクセスできるグルメサイトに、飲食店の紹介ページが設置されている場合、当該ページをプリントアウト(複製)することなど)、権利者の黙示的な許諾があると認定される場合では、著作権侵害とならないと考えられます。

しかし、黙示の許諾が認められるかどうかは、個々の事案について個別具体的に判断をする必要があります。

3.ショッピングサイト内の商品画像の著作権

ところで、ショッピングサイト内の商品画像に著作権はあるのでしょうか。

上記をいままで読んでいただければわかりますが、商品画像も著作物に該当するため、撮影者が著作者となり、著作権が存在します。そのため、自社のショッピングサイト内にその画像を利用する際、著作権侵害にならないようにする必要があります。

4.ウェブサイトにリンクを貼る行為と著作権の関係

ウェブサイトに第三者のウェブサイトのリンクを貼る行為は、リンク先のURLを掲示するだけであり、リンク先のコンテンツの内容自体を複製してウェブサイトに掲載するものではなく、またURL自体は著作物ではないため、複製にはあたりません。

リンク先のウェブページのデータは、リンク先のウェブサイトのサーバからリンクをクリックした閲覧者に対して直接送信され、リンクを張った側のサーバに送信され蓄積されるわけではないため、公衆送信にもあたりません。

したがって、基本的にはリンクを張る行為は著作権侵害にはあたりません。

ただし、埋め込みリンク(再生ボタンをクリックすることにより自身のウェブサイト上で動画を視聴できるようにすること)やフレーム内表示(自身のウェブサイトのフレーム内に他人のサイトが表示されるようにリンクを張ること)は著作者の有する著作物に著作者名を自由に表示できるという氏名表示権(著作権法第19条)や同一性保持権(著作権法第20条)の侵害が問題となる可能性がありますので注意が必要です。

なお、リンク先の情報を不正に利用したり、リンク先に損害を与えたりした場合には、刑法上の罪や民法上の不法行為責任が生じる可能性があります。

5. 商標権や意匠権等にも注意が必要

他の権利、例えば商標権や意匠権にも留意が必要で、適切な法的対応が求められます。

商標権は商品名などに関連する権利で、意匠権は著作権とあわせて商品やウェブサイト等のデザインに関する権利のことです。ネットショップ上で商品名を掲載する際や、他社の商品やウェブサイト等のデザインを参考にする場合には、これらの権利の侵害に注意し、必要な場合には権利者の許可を取りましょう。

6.まとめ

サムネイルを例として、ネット画像の法的問題点について、主に著作権の観点から見てきました。

他社のショッピングサイト内に掲載されている商品画像や、著作権のある商品画像を無断で利用することは著作権侵害に該当します。自社が利用しているサムネイルに著作権侵害の疑いがあることを発見した場合は、速やかに削除することをお勧めします。

万が一、著作権者からクレームがあった場合は、速やかに対話し、協議を通じて解決しましょう。最悪の場合、罰金などの罰則を受ける事態となってしまうこともあるため、「このような場合に著作権法との関係はどうなる?」といった疑問点がありましたら、できれば事前に専門家に相談したほうが良いでしょう。